コラム

2021/10/08コラム

成年後見・保佐・補助の違い

弁護士 有馬 慧

高齢者の財産管理の方法として、法定後見という制度があります。

法定後見は、既にご本人の判断能力が不十分となっている状態のとき、家庭裁判所が選任した成年後見人・保佐人・補助人が、本人の財産管理の支援を行う制度です。

この成年後見・保佐・補助の制度には、どんな違いがあるのでしょうか。

種類

成年後見

保佐

補助

申立てできる人

本人、配偶者、四親等内の親族、検察官など

判断能力の程度

精神上の障がい(※認知症、知的障がい、精神障がい等)により、判断能力を欠くのが通常である状態(民法7条)

精神上の障がいにより、判断能力が著しく不十分な状態(民法11条)

軽度の精神上の障がいにより、判断能力が不十分な状態(民法15条)

財産に関する法律行為の代理権

あり(民法859条)

ただし本人の居住用不動産の処分には裁判所の許可が必要(民法859条の3

なし

例外的に、特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の裁判所の審判があれば代理権が与えられる(民法876条の4

なし

例外的に裁判所が特に定めた事項について代理権あり(民法876条の9

本人がした行為の同意権

同意の有無にかかわらず本人行為は常に取消しできるため、同意権はない

民法131項各号に定められる重要な法律行為(借金、保証、不動産売買、遺産分割など)及び裁判所が特に定めた事項について同意権あり

民法131項各号に定められる重要な法律行為のうち、裁判所が特に定めた事項のみ同意権あり

本人がした行為の取消権

あり

ただし日用品の購入など日常生活に関する行為は取消しできない(民法9条)

同意権がある行為には取消権もあり(民法134項)

同意権がある行為には取消権もあり(民法174項)

このように、各制度によって、代理権・同意権・取消権の範囲は異なります。

一方で、日用品の購入など日常生活に関する行為は、いずれもご本人の意思が尊重されています。

どの制度を利用できるか、保佐や補助を利用する場合に代理権などの範囲をどうするか、ご本人の現在の判断能力や、事案や状況を踏まえて検討することになります。

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